開発ヒストリー– History –

高性能制御を簡単に、みんなに!

最初は、ベンチャーによくある話で、仲間内の腕自慢!

ソフトが得意なやつ、回路が得意なやつ、パソコンに関わることなら何でも突っ込みたくなるやつ、が集まって何かやろうという話になった。みんなの得意わざを集めるとモーションコントローラがよいだろうという方向。しかし、人、物、金が少ない(ほどんどない)会社。競争はしたくない(できない)。ならば、どうしようか?短距離走で勝負しないで、長距離走の勝負をしたい。ハードウェアの開発をできるだけしないで、なるべくソフトウェアの蓄積で勝負できるしくみがよいだろう。

それで、パソコンベースのソフトウェアモーションコントローラに行きついた。

パソコンならば、CPUのスピード、メモリ容量は市場の競争で自動的に向上する。ハードの開発は世の中に任せておけばよい。こちらは、ソフトウェアを少しずつ積み上げていけば、製品は時間とともに良くなる。しかし、パソコンをプラットフォームにするならば、Windowsをリアルタイムにするソフトウェアが必要。このときの選択肢はVenturComの「RTX」しかなかった。これがとても高い。仲間でお金を出し合って、RTX-SDKの4.3.2.1を購入した。

Windowsリアルタイム拡張ソフトウェアRTX

このときの思い出話。東京エレクトロンデバイスのRTX営業マンが当社に来たが、まだ創業半年くらいでお金が無くてイスが足りなかった。それで、足りない分はゴミを入れておく一斗カンにダンボールをひいて椅子として打合せした。(懐かしい話だ!)

これがそのときの一斗カン。中身は乾電池。今も社内にある。

決断缶
「RTX – SDK 決断缶」
”ケツダンカン”

モータドライバに接続するのだから、パソコンに加えて、最低限のハードウェアが必要になる。これは、長野県から補助金を得て開発した。初代の光ファイバのリンクタイプだ!これは、初期の顧客に販売したが、いろいろな理由があって、今は保守品になっている。

光ファイバリンクシステム
光ファイバリンク システム図
光通信i/fカード
光通信 i / f カード
4軸パルス発生ノード
4軸パルス発生ノード
光ファイバーコード
光ファイバー

このとき、光通信の送受信回路を作るため、以下のIBMの文献を長野県駒ヶ根から東京工業大学の大岡山キャンパスの図書館までコピーを取りに行って、それを理解して、8B10Bエンコーダ、8B10Bデコーダという回路を自社開発した。
最近は、FPGAメーカ等からIPとして提供されている。
当時は、えらく気合いが入っていた。お金がなかったからね。

光通信用変調復調回路の文献

光通信送受信回路設計のための文献
IBM J. Res Develop. Vol.27 No.5
September 1983 pp.440-451

初代の光通信タイプのモーションコントローラを販売する中で出てきたお客様の要望は、

「ソフトウェアマシンコントローラ」(「モーション」ではなくて、「マシン」)

モータ制御だけではなくて、IO制御も含めて、機械制御プログラム開発すべての効率UPをしたい。

VBでGUI(グラフィックインターフェイス)とともに機械のシーケンス制御をしているがソフトが複雑になってしまう。タイマーコントロールだらけになって、動作がおかしいときもある。ならば、GUIと機械制御ソフトを2階層化して、GUIのVBプログラムと新たに機械制御用「簡単マルチタスクマシンコントローラ」ソフトウェアでの分担を提案して、開発した。これがいまの「MOS Bench(モスベンチ)」。モーションコントローラ(軸制御ボード)に加えて、DIOカード等のシーケンス制御ができるソフトウェアが追加された。

簡単マルチタスクマシンソフトウェアコントローラのMOS Bench

次のお客様の要望は、「多軸化」

ひとつのパソコンで40軸くらい制御したいという話で、1枚あたり8軸のRT8シリーズPCIカードを開発した。

PCIカード

次のお客様の要望は、「シーケンスの高速化」

MOS言語をリアルタイムに解釈して実行する「リアルタイムインタープリタ」を開発した。これで、ユーザが記述した機械制御プログラムをWindowsに邪魔されずに最優先で実行できるようになった。ICボンダ等の高タクト装置にも採用されるようになった。

波形比較図

次の開発テーマは、「動作波形表示ロギング機能」

これは、正直に話すと当社のバグ解析ニーズが開発動機。関西のほうに納めた装置で1日に1回程度、不具合が発生するということで、当社モーションカードからの位置指令出力パルスカウンタ、サーボドライバからのABフィードバックカウンタを1ms周期サンプリング120秒間(120,000行)実時間波形表示、ファイル保存ができるようになった。これが8軸、DIO32点、AD4点、DA4点に機能拡張され、現在の「MOTIWARE Analyzer(モウティウェア アナライザ)」になった。

動作ロギングアプリケーション

このときの思い出話はいっぱいある。
ゴールデンウィークにお客様のラインが休止するということで、その装置に使われているパソコンを関西の工場まで取りに行って、ゴールデンウィークに再現実験評価して、ゴールデンウィークが明けた初日に返却に行った。
それだけでは、原因がわからず、ソフトウェアに前述のロギング機能を入れたり、モーションボード自体にハードウェア的な原因トラップ機能をつけたり、ほぼ毎週関西に車で通った。

工場には朝9時に入って、遅い時は午前3時まで、お客様が装置を使わない時間を借りて、実験した。午前3時になるとタクシーが無くなる。そのときは、直接のユーザになる装置会社の方をビジネスホテルまで、2往復して送り届けた。
解決に3か月くらいかかったが、この過程で製品やツールが磨かれた。(お客様、ご迷惑をおかけしました。)